民事再生.com

Q1
民事再生はどのように進行するのですか

A1
申立てと決定→資産の調査と負債の確定→再生計画の策定と認可です。
[概略]
民事再生手続きは、債務者等が申立て、裁判所が開始決定を下します。
申立てから決定までの間の1,2週間は、早い者勝ちにならないよう申請に基づいて保全処分の命令が出されるのが普通です。
また、申立から決定までの間に、再生債務者による債権者集会が開催され、お詫びと状況説明が開催されます。
その後、会社の資産調査と債権届け出等による負債の調査が行われます。
これに基づき、再生計画案が作成され、債権者集会で再生計画案が認可されたのち、裁判所の認可・決定が行われます。
そのあと、再生計画が実行され、めどがついた段階で、裁判所が手続きの終結を宣言します。
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Q2
再生計画案を認可してもらうポイントは何ですか

A2
?実現可能な、?破産よりは有利な再生計画案を作成することです。
再生計画案は、再生債権者の決議を経て裁判所による認可を受けると再生計画の効力が生じ、再生債権の権利内容が変更されます。
小口の債権者が極端に多く債権者集会を開催することが困難なときは書面決議となる場合がありますが、原則として、債権者集会で決議します。決議するためには、
? 出席議決権「者」の過半数の同意
? 議決権者の議決権総「額」の2分の1以上を有する者の同意が必要となります。
小口の債権者は、再生手続きとは別に弁済し、大口債権者は、総会に先立ち、あらかじめ委任状をもらうようにすれば、スムーズに運びます。
再生計画案が否決されると破産手続きに移行しますから、特に、事前に大口債権者とは協議し、委任状をもらうように尽力しましょう。
なお全員の書面による同意がある場合は、「同意再生」として債権者集会が不要になります。
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Q3
再生申し立てに伴うリスクはありますか

A3
破産への移行と損害賠償請求の問題が生じます。
第1に、再生計画が認可されたとしても、裁判所は、申立または職権で役員の責任に基づく賠償請求債権の査定をして役員の責任が追及される場合があります。 もし経営判断のミスで会社を民事再生に追い込んだ場合は、それ相応の責任を追及されてしまうこと、個人的には経営権の維持どころか、破産に追い込まれ全財産を失うリスクがあることは覚悟しておいてください。
第2に、再生計画が認可されないときは、裁判所は、破産手続の開始決定を命ずることができ、通常は、破産手続に移行します。弁護士費用を含めて多額な再生手続き費用を費消し、多くの関係者を振り回したあげくの破産への移行は、当初から破産するよりも、はるかに破産後の再生を困難にします。
民事再生申立てには、かなりリスクを伴うと認識しておいてください。
年間、全国での民事再生の申立件数は160件未満で、東京でさえ60件未満です。この件数が、民事再生手続きに対する信頼感を如実に表しています。
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Q4
民事再生では現経営者が経営権を維持できるというのは本当ですか

A4
維持できる場合もあります。
民事再生では、手続き開始後も、現経営陣が経営権を維持することを前提としています。これをDIP(Debtor In Possession)型といいます。
その趣旨は、会社の内情に精通している現経営者に経営を委ねた方が、部外者の管財人に経営を委ねるより合理的だという判断に基づくものです。したがって、いくら会社の内情に精通していても、経営者として問題があるときは、経営者の交代を命じられます。
突然の不渡り等「経営者の資質とは関係のない資金繰り悪化」なら経営の続投は可能でしょうが、無理な事業の拡張とか、事業環境の変化についていけなかったという「経営者の資質が原因の資金繰りの悪化」なら経営の交代を命じられる確率は高いと思ったほうがいいでしょう。
内容によっては、単に代表者を変更するにとどまらず、現経営陣が総退陣して管財人が経営にあたる場合も少なくありません。
民事再生=経営権の維持とは思わないでください。
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Q5
民事再生手続きでは、取引先に対してどのような配慮ができますか

A5
連鎖倒産の防止、少額債権の弁済の制度です。
民事再生は金融機関だけでなく取引先も巻き込む手続きのため、企業体質の弱体な中小零細企業には負担になります。
そこで、手続き内に〔少額弁済の制度〕と〔連鎖倒産防止の制度〕を設けています。
〔少額弁済の制度〕は、民事再生法は、少額の債権(東京地裁では10万円以下)を、裁判所の許可を得て、随時弁済する制度です。
〔連鎖倒産防止の制度〕は、取引先の中小企業が、民事再生申立をしたことにより連鎖倒産の危機に面した場合、裁判所から許可をもらって、その企業にだけ弁済する制度で(民事再生法85条2〜4項)、東京地裁では、再生債務者への販売額が原則として20%を超えているか否かで判断しています。
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Q6
民事再生の問題点はどこですか?

A6
費用・要件ともハードルが高くリスクも高い点です。
平成26年度の民事再生申請件数は、全国で165件。(東京56件、大阪21件、他は数件)。
法人破産件数が約8400件との対比で考えると、明らかにこの手続きが再生希望者から敬遠されています。
再生が可能なのは、?営業利益が黒字であり、?病院や地域の中核企業等社会的重要性が強い企業の場合です。営業利益が赤字で同業他社も多い企業は、無理です。
倒産した以上、債権者は経営者に不信感を持ちますから、破産より弁済率の高い再生計画案を示しても信用されないし、担保権の行使を阻止できず、担保を有する金融機関の債権が事実上優先される結果、取引先との信頼も維持ができません。
また、予納金や弁護士費用で1000万円単位のお金が必要になり、仕入が全て現金決済になることから、当分の間、仕入代金も用意する必要があります。
免除益に対する課税もあり、繰り延べ損失で処理できない場合は、納税資金も用意する必要があります。
また、経営に問題があるときは、経営者は交代させられるし、再生の申立をしたものの、かなりの割合で破産手続きに移行させられます。
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